先日、次女と東京都庭園美術館へ。
開催中の「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーが語るアール・デコ展」を鑑賞してきました。

東京都庭園美術館の前身である旧朝香宮邸は、
1933年竣工、日本におけるアール・デコ建築の最高峰と言われています。
アール・デコは、直線・幾何学・対称性を基本に、
当時の最先端素材と職人技術を融合したスタイル。
その特徴が、邸宅の隅々まで圧倒的な完成度で落とし込まれています。
玄関では、フランスの巨匠 ルネ・ラリックが手がけた《ガラスレリーフ扉》が迎えてくれます。
光を透かし、彫刻のように浮かび上がる女性像。
ガラスの厚みと透明度の違いを生かした陰影表現は、
“光をデザインする”というアール・デコの精神そのもの。

床のモザイクタイルは、曲線と幾何学が調和するアラベスク文様。
壁にはエッチングガラスや金属装飾が配され、照明器具も当時のオリジナル。
特に天井照明は、金属細工の繊細な透かしと光の重なりが美しく、
現代のインテリアにも通じる“陰影のデザイン”が感じられました。




家具にもアール・デコらしさが全面に表れ、
曲線のアーム、象嵌による模様、光沢感のある木材仕上げなど、
時代の空気をそのまま閉じ込めたような空間です。
◆ “永遠なる瞬間”を語るヴァンクリーフ&アーペル
展示されていたハイジュエリーは、アール・デコ期のデザイン哲学を受け継ぎつつ、
「幾何学」「直線美」「色石の大胆な構成」といった特徴が鮮明。
特に印象的だったのは、
宝石を建築のように組み上げていく構成力と、
自然を抽象化する造形のセンス。
まさに“身にまとう建築”と言える美しさでした。
◆ 茶室「光華」— 中川砂村が見せる“静の建築”
庭園散策では、四季を映し込む池泉回遊式庭園が広がり、
その奥にある茶室「光華」を拝見しました。
設計は、近代数寄屋建築の名手 中川砂村。
天然素材の質感、光と影、余白の取り方など、
アール・デコの豪奢さとは対照的な「引き算の美」が際立ちます。
床の間のしつらえ、天井の組み方、畳の目の方向。
一つひとつが空間を繊細に整え、
“静寂をデザインする”日本建築の奥深さを再認識しました。




◆ 二つの美が教えてくれるもの
アール・デコの華やぎと、日本建築の静謐。
まったく異なる美意識が、一つの敷地で響き合う体験は、
インテリアコーディネーターとして学びの多い時間でした。
素材、光、装飾、線の使い方、そして空気感。
どれも住空間の提案に活かせるヒントばかり。
東京のど真ん中で、時代を超える“デザインの対話”を味わえる場所。
また必ず訪れたいと思います。
