佐賀県立美術館で開催されている
「親愛なる友 フィンセント〜動くゴッホ展」へ行ってきました。
ゴッホの作品を目にすると、私には思い出す展覧会があります。
2021年、福岡市美術館で開催されたゴッホ展です。
その時は実際の絵画を鑑賞し、本物の作品を目の前にした時の力強さや色彩、筆遣いにとても感動したことを今でも覚えています。
今回の「動くゴッホ展」は、そんな2021年の展覧会とはまったく違うアプローチでした。
「作品を見る」から「ゴッホという人を知る」展覧会へ
今回の展覧会には、ゴッホの実物の絵画が展示されているわけではありません。
デジタル技術によって作品を映像として表現した展示や、ゴッホの世界を体感できる空間、そして彼の人生をたどる展示で構成されています。
最初は「絵画がないゴッホ展って、どんな感じなのだろう?」という気持ちもありました。

ところが見ていくうちに、これまで作品を通して知っていたゴッホではなく、ひとりの人間としてのフィンセント・ファン・ゴッホに少しずつ近づいていくような感覚になりました。
27歳で画家を志し、37歳で生涯を閉じたゴッホ
展示では、ゴッホの画家としての人生を
「オランダ時代」
「パリ時代」
「アルル時代」
「サン・レミ&オーヴェール時代」
という4つの時代に分けて紹介しています。
27歳で画家を志し、37歳でその生涯を閉じたゴッホ。
決して長い画家人生ではありません。
しかし、その間に約2,000点もの作品を残したと紹介されていました。
弟テオとの深いつながり、ほかの画家たちとの出会い、南フランス・アルルでの生活、そして心の葛藤。
人生をたどりながら作品を見ていくと、描かれるものだけでなく、色彩や光の捉え方、筆遣いまで変化していったことがよく分かります。
特にパリ時代には印象派やジャポニスムとの出会いがあり、アルルでは強い光と鮮やかな色彩へ。
私たちが「ゴッホらしい」と感じている色や表現も、さまざまな人や場所との出会いの中から生まれていったのだと改めて知りました。
「ひまわり」や「星月夜」の見え方も変わってくる
「ひまわり」や「星月夜」など、ゴッホの代表作はこれまでにも何度も目にしてきました。
けれど、その作品が生まれた時のゴッホの環境や心情を知ってから見ると、同じ作品なのに少し違って見えてきます。
ゴッホは何を見ていたのだろう。
どんな気持ちでこの色を選び、どんな思いで筆を動かしていたのだろう。
そんなことを考えながら作品を見る時間も、今回の展覧会ならではの体験でした。
インテリアコーディネーターとして惹かれた「ゴッホの部屋」
そして、インテリアに携わる私が特に興味深かったのが、ゴッホの部屋を再現した空間です。
絵の中で見ていたベッドや椅子、テーブル、壁に掛けられた絵。
そして壁や床、家具の色。
平面の絵画として見ていた空間が立体になることで、「この部屋でゴッホは暮らしていたんだ」と、作品の世界が急に身近に感じられました。
インテリアという視点から見ると、色の組み合わせもとても興味深いものがあります。
空間を構成する色や家具は、単に部屋を美しく見せるためだけのものではなく、そこに暮らす人の気持ちや生き方まで映し出すことがあります。
ゴッホが描いた室内を実際の空間として体感できたことは、私にとって今回の展覧会の大きな魅力のひとつでした。
デジタルだからこそ体感できるゴッホの世界
大きな壁いっぱいに映し出される作品も印象的でした。
色が広がり、作品の世界に包まれていくような感覚。
もちろん、本物の絵画を目の前で見る感動とは別のものです。
けれど、デジタルだからこそできる「作品の中に入っていくような体験」には、また違った面白さがあります。
美術作品の楽しみ方も、時代とともに広がっているのだと感じました。
2021年には「作品」に感動し、2026年には「人」を知る
2021年、福岡市美術館ではゴッホの「作品」に感動しました。
そして2026年、佐賀県立美術館では、その作品を生み出した「人」に触れたように感じました。
同じゴッホでも、展覧会の切り口によってこんなにも違う体験になるのですね。
ゴッホの人生を知った今、改めて本物の作品をもう一度見てみたい。
きっと2021年に見た時とは、また違ったものが見えてくるような気がします。
美術館は作品を見るだけでなく、その背景にある時代や文化、人の生き方に触れられる場所。
そして、インテリアや空間、色を考える仕事をしている私にとっても、たくさんの刺激や気づきをもらえる場所です。
今回も、とてもいい時間になりました。
**親愛なる友 フィンセント〜動くゴッホ展**
会場:佐賀県立美術館
会期:2026年7月25日〜9月6日
※展覧会の開催情報・開館時間等は、お出かけ前に公式情報をご確認ください。
